終わった後、四国電力、JR四国、NTTドコモ四国、JA、百十四銀行などの仕事で懇意にしている皆さんがいらしてくださっていたので、ステージすそでお話しました。特に、NTTドコモ四国の部長は、全行程をデジカメで収録してくださっていたそうで、出来上がったら持って来てくださるそうでしたので、お礼を言ったら、途中、ぼくと目が合ったことを思い出しました。そうなんです。彼はクラシック大好きな人なのでした。『リンゴ追分』が、あっという間にショパンの「別れの曲」になった時にニコッと笑いかけてくださったのでした(笑)。でも、やはり、出身地ですね。高松高校の後輩の、衆議院議員の小川淳也君や同窓会の仲間がいらしていたのですけど、みんな、『梅林橋の梅』に感動して鳥肌が立った、って言ってくれました。特に、早稲田大学も同窓だった女性は、涙が止まらないと言っていました。
だから、ぼくは言いましたよ。
「『梅林橋の梅』の思い出はリアリズムの中から生まれたんだよ。お涙頂載じゃなく、ぼくの音感では、梅の香りは、変ト長調だから、あれを中心に曲を考えたから、プロローグとエピローグはその近隣調のフラット系にして、その他の15曲は、シャープ系にしただけなんだ。」
「でも、どうしてあんな美しい曲が浮かんだの。」
「もう、50歳になったからさ、最近の思い出が一番先に浮かんだんだろうね(笑)。ぼくの人生のいろんな時点での栗林公園との出会いの思い出を曲にしただけで、現実を素直に眺める姿勢で貫かれている、リアリストとしての視点がないと書けないと思ってます。でも、それがあなたの心に響いたということはとても嬉しいですね。」
母の介護を手伝ってくださっていた、ホームヘルパーさんもいらしてくださっていました。しかも、形見分けで使っていただいていた、母が愛用していたブラウスを着ていらしていました。なんでも、どこかのさぬきうどん店に貼ってあったポスターを見ていらしてくださっていました。「浜辺の歌」と「リンゴ追分」が大好きな曲だったそうで、一緒に口ずさんでくださっていて、「音楽はいいわね。」という最高の感想をいただけました。
その後、千の風になった母と一緒に、『掬月亭』に行ったんだけど、遠方から来てくださったり高松市内の、若いSNSのミクシィやGREEのリンク先(現在800人くらいいらっしゃいます。)の皆さんと一緒だったのに、『掬月亭』は開かれていた武者小路千家のお茶会でいっぱいだったので、梅林橋のそばの『日暮亭』に一緒に行きました。途中、梅林橋を通ったので、
「ここが、母が、もう歩けなくなって休んだ茶店だよ。」
とご案内しました。池には鯉が泳いでいました。観光客が麩をやっていました。
「アハハハ・・・。本当に、カプッ、カプッ、って岡田さんの曲みたいにかぶりついているね。でも、今日は本当に有難うございました。ぼく、勇気を岡田さんの曲からいただきました。」
「えーーーっ、そんな前向きの曲じゃないよ。」
「アマチュアがここまでやれるんだ、ってこと、目の前で見て感動しました。」
「どうも有難う。」
彼は、29歳の若者で、来年、ベンチャーを立ち上げるところでした。彼がぼくより将来まで生きる予定の香川県内在住の若者だということは、本当に嬉しかったです。
もう、栗林公園が大好きだった母は、いなくなってしまったけど、梅林橋からの芝生と松の木は、とても美しい眺めでした。
しばらく美しい景色に浸ってから『日暮亭』に行き、音楽だけでつながった若い彼らと、お茶室で、冷たいお抹茶をいただいてから帰宅しました。
携帯電話をマナーモードにしていたので、いっぱい留守電が入っていました。
親しい友人達でした。みんな、演奏会終了後、ぼくに話しかけようとしたそうでしたけど、ぼくがいろんな人たちに囲まれていて、邪魔だといけないとのことで話しかけられなかったのだそうです。ああー、やっぱり出身地だな、って思いました。
そして、帰宅したぼくのパソコンに大変に嬉しいメールが2つ届いたので、誤解を恐れずに、そのまま、掲載いたします。
一つはGREEというSNSでリンクしている、15歳の京都の中学生からのメールでした。
>お疲れ様です。庭園コンサート とても良かったです。友達と庭園を周り過ぎてちょっと遅刻しましたが、後方の椅子に座り、日暮亭の辺りから聴いてました・・・楽曲が少し短いのが残念?でしたが、指のタッチがとても柔らかくいい音色で感動しました。お亡くなられたお母上様のご冥福をお祈りします。プログラムの吹上の朝、梅林橋の梅〜エピローグまでの音間は凄く、ググッときました。来て良かったてす。またコンサートの日程など決まりましたら、寄らせていただきます。季節の変わり目、風邪などに気を付けられて、頑張って下さい。有難うございました。
演奏会の出来不出来は時の運ですから、いい時もあればそうでない時もあります。だけど、なんて礼儀正しい、感受性豊かで素直な中学生なんだろう、と感動しました。
もう一つは、庭園コンサートの司会をされている香川県庁のN氏が、県民に定期的に出しているメールでした。
>●一味、ふた味もちがった今回の栗林公園庭園コンサート・・・
昨日の日曜日、栗林公園では、恒例の庭園コンサートがあり、3歳からピアノを習い始め、東京御茶ノ水カザルスホールアマチュア室内楽オーディションで優勝した、そして今でもアマチュアでの演奏に拘っている地元出身の岡田克彦さんのピアノコンサートでした。
岡田さんは、舞台俳優の江守徹さんとも共演した実績がある、卓越した技術の持ち主で、東京でも高い評価をいただています。
そういう方のコンサートのMC(Master Of Ceremony)をさせていただき、それも身近に演奏を聴けて、MC冥利に尽きました。
ピアニストの岡田克彦さんは、今までに約750曲も作曲の実績のある作曲家でもあり、今回は、わざわざこの日のために、というか、どうして公園をイメージした曲がないのだろうと不思議に思い、それなら自分がつくろうと思い立ち、自分が子どもの時に家族や友達といっしょに何度も訪れた公園の懐かしい昔の一こま一こまを思い出しながら、思い出でいっぱい詰まったお庭の国宝「栗林公園」をテーマに、ピアノ組曲「記憶の底の栗林公園」を作曲して、ご自身で演奏していただきました。
組曲や演奏は、ほんとうに素晴らしいものでした。
ピアノ組曲は、18の小品を組み合わせたものでした。南庭に広がる三島一連の南湖の中に妙に存在感がある岩組み「仙磯(せんぎ)」は、岡田さんの子ども心にも大いに刺激になったようです。究極的には、不老不死の薬を飲んで仙人となって長生きするのが道教の教えですが、日本という国は、昔から他国の強い憧れだったのですね。秦の始皇帝、漢の武帝、鑑真など、日本への興味はつきないようです。
そのほか、子供心に、島津からもらったソテツの生い茂った鳳尾塢、飛来からの眺望を上回ると江戸時代には言われていました会僊巖などには、特に思い入れがあるようで、氏の熱き思いは、ピアノから伝わってきました。
多くの人が特に聞き入っていたのは、小品「梅林橋の梅」でした。5年間の介護の中、昨年2月に久しぶりに外出した母親が、自分の足で、南庭の掬月亭に行きたいというので、公園に連れていかれたようですが、足がやはり不自由で、結局は、体力的には、その手前の梅林橋までしか行けず、おかあさんが、来年こそ元気になって掬月亭まで行きたいという話をされて、結局はその半年後の昨年の9月にお亡くなりになられたことを告白されて、曲を演奏されたときは、もらい泣きしている方もおられました。
私自身も何度か体が震えるほど、ほんとうにすばらしかったです。
庭園コンサート、いままではどちらかというと素晴らしいお庭の国宝の中で演奏するということで、それはそれで、雰囲気もあっていいのですが、今回は、曲の内容が、公園そのものであって、岡田さんと特にお母さんを中心としたご家族の思い出としての公園ということで、聞いている皆さんも共通する何かがあって、いつもの庭園コンサートとは一味違ったいい意味でのコンサートになったと思います。
岡田さんには、ほんとうにありがとうござました。
アマチュア界では、つとに有名なピアニスト、岡田克彦さん、今後もがんばってその才能を活かしてほしいものです。
岡田さんの素晴らしい演奏は、東バイパスとインテリジェントパーク行きの道路が交差する交差点に位置する、林町の「カフェ すぐる」で、毎週土曜日、19時から22時まで、定期演奏を行っていますので、そこで心ゆくまで聞けます。もちろんショーチャージもいらず、ドリンク飲食代だけで聞けます。
技術的にはプロを凌ぐ卓越さですが、あくまでアマチュアに拘っている岡田さんです。ぜひとも、一度聞いていただき、素晴らしい演奏を堪能してください。
つくづく、自分は一人でないと思います。周りの多くの人に感謝しなければいけないと思います。
岡田さんの演奏のあと、そんなこと思いました。
Nさん、ぼくは、あなたに感謝こそすれ、感謝されるほどのことはしていません。2年程前に早稲田大学の同窓生の紹介ではじめて出会い、母の逝去のあと、ぼくを暖かく励ましてくださいました。あなたの激励がなかったら、ぼくは、二度とステージに立たなかったかもしれません。第一、「記憶の底の栗林公園 OP.111」の作曲に際して一番適切なアドバイスを下さったのはあなたでした。本当に有難うございました。
また、母の介護のための5年間の演奏活動中断を破っての久々のステージカムバックでしたが、ミクシィとGREEという二つのSNSでつながっている、優しい、全国のリンク先の皆様、約800名に、いろいろと励ましていただきました。
2000年に、岡山後楽園築庭300年祭に呼ばれて江守徹さん等の朗読と共演して以来懇意にさせて頂いている「山陽テレビ」報道局の事前取材もあり、テレビで事前PRも出来ました。
ぼくは、本当に、いい人達に囲まれて幸せだな、と改めて感謝いたしました。
掲載写真は、栗林公園の「梅林橋」からの池と芝生等の美しい眺めと、2007年10月14日当日、栗林公園庭園コンサートに聴きに来てくれた、高松高校の後輩の衆議院議員の小川淳也君達の友人が撮影してくださった写真、です。